「中世魔術」

「魔術」についてのお話を続けましょう。中世後期の魔術;中世キリスト教会では魔女狩りが盛んになり、薬草知識のある者、古い祠や神社を祭っている者、占いを生業にする者は次々に捕まり魔女裁判にかけられ火刑にされたため、民間魔術は地下に潜ることになりました。ルネッサンス期に入ると雰囲気は一転してきます。ルネッサンスの功績は「自然魔術」を復活させたことにあります。自然魔術は神的なものであり許されるべきだとし、知的魔術(自然現象を基本に自然物を用い天体の助けを得ようとするもの)は健全であるから、悪魔と己とを一体化させて怪異を企む暗くおどろおどろしい中世魔術とここではっきりと一線を引きました。

 

この魔術思考では、人間を小宇宙に例えて大宇宙の生命力を人間の内部に取り込み、利用する事が可能だと考えたのです。1469年プラトン著の「饗宴」の注釈によると「魔術の力は全てエロスに由来する」と書かれてあり、これを宇宙の共感と名づけ、天の力と呼ばれるものはエロスの力に他ならないと定義されて行きます。世界にあるもの全ては一人の創造主によって創られていて、頭脳、肺、心臓、肝臓など全ての体の部位は互いに惹き合い助け合い、それらのどれかが苦しむ時は皆一緒に苦しみを分かち合う、相互の類似は相互の愛を、相互の愛は相互の引力を生む、それこそがエロス、それこそが魔術の真髄だというわけです。この魔術の力によって、磁石は鉄を、硫黄は火を、太陽は花々を、月は水を、火星は風を引き寄せる・・ルネッサンス期の学者にとって自然は象徴と比喩の集合体であり、宇宙は巨大な力の集合体だと考え、魔術は宇宙と一体になることで自然的事象の中に隠された意味を感知し解き明かす、森羅万象に行き渡るネットワーク操作の科学に他ならなかったのです。

 

そして近代の魔術へ進みます。近代の西洋儀式魔術とは、19世紀から20世紀にかけてイギリスに出来た秘密結社「黄金の夜明け団」により確立したヨーロッパの儀式魔術が発端であり、隠密学ないしは秘術の体系のことを指します。またこの「黄金の夜明け団」は、フリー・メイソン(男性だけの真摯な信仰者のみの秘密結社で現在の会員数140万人うち日本人300人)、薔薇十字軍(17世紀にドイツで発祥した錬金術や魔術を駆使して人々の救済をすると言うギルド)、カバラ(「受け入れ」「伝承」という意味の言葉。ユダヤ教の伝統に基づいた神秘主義思想)と古典魔術儀式を統合し、体系化し、魔術に新たな息吹を吹き込みました。更には、占星術、タロット、ギリシャ・ローマ・エジプトの神話までをも統合したシンボリズムと形而上学を枠組みとして、イニシエーション儀式、瞑想の技法を用いた霊的修練の体系をも構築して行きました。魔術を荒唐無稽な奇術とはっきりと区別するために、魔術「magic」の本来の表記を「Magik」に変更したのもこの時。日本ではマジックと発音せずに「マギック」と発音しなさいと言うその道のプロもいるのだそうですね。(続く)

クリスタル

 

占い暦40年以上、

オーストラリア・シドニー在住の日本人カウンセラー

 

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