「人間関係」

「火のないところに煙は立たぬ」と昔から言われるように、人の噂話はハリウッドの噂から、ご近所のひそひそ話しに至るまで、どんなに小さな物にもなんらかの真実が含まれていると思われてきました。どころが時には全く真実とは違っている事も起こり得るのです。センセーショナルで有名な事件としては1993年にイギリスで起きた「偽りの訴訟」事件です。ある青年が性的虐待を受けたとカトリックの司教を訴えました。しかし司教側の綿密な調査によって、この青年の記憶が、フォールス・メモリー(false memory)と判明しました。青年には騙そうとする気は全くなく、全てが「記憶違い」から発生した訴訟問題だと科学捜査で立証されたのです。興味深いことに、催眠療法やカウンセリングが一般化してくるのと比例して、いじめ、セクハラ、虐待等を受けた事を「突然」思い出した被害者が増加しています。これらの人々は、全く無実の近親者、家族、恋人、知り合いを名指しで訴え、裁判に持ち込むケースが後を絶ちません。アメリカでは「偽りの記憶症候群協会」(False Memory Syndrome Foundation)、イギリスでは「偽りの記憶英国協会」(British False Memory Society)が、数多くの心理学者やカウンセラーをメンバーとして、設立されています。これらの機関では、思い違いによって突然加害者にされてしまった人たちを救済する活動をしています。

 

なかったことなのにあったような気がする、「思い違い」は誰にでも起こります。この偽りの記憶で訴訟を起こす人たちは決して精神病者でも記憶障害でもありません。では偽りの記憶はどうやって作り出されるのでしょう?全く同じ状況で全く同じ事象を目撃しても、後になって語られる記憶が人によってかなり違う事が少なくありません。そこでロフタス(認知心理学者)は、思い出されるときの質問の仕方に注目、「会話のやり取り」が、偽りの記憶を作り出す事を証明して見せたのです。被験者に自動車事故のシーンを見せ、①のグループには、「車が激突(smashed)したとき何キロ位のスピードがでていましたか?」と聞き、②のグループには、「車がぶつかった(hit)したとき何キロ位のスピードがでていましたか?)と聞いたのです。被験者は1週間後にまた見たシーンの質問を受けます。その際、色々な質問に「シーンの中でガラスが割れたのを見ましたか?」と言うのを交ぜます。正解は「NO」であるのに、①のグループでは30%以上がYESと答えました。無いはずのシーンを頭の中で作り出してしまったのですね。

 

同じ場面を見たはずなのに、聞き手がどういう言葉を使って質問するかによって、記憶情報が簡単に誘導されてしまう。これは人間が会話しながら想起することの危うさを露呈することになりました。集団エゴイズム(集団性が偏見を拡張する事)、うわさが膨らんで行く背景には集団心理がうそを本当に変えてしまう要素が多分に含まれます。人間関係でも他人からのどういう言葉で相手を評価するかが決まる。ですから、あなたの言葉の責任、集団性の危うさについて今期は考えてみてくださいね。 

 

クリスタル

 

占い暦40年以上、

オーストラリア・シドニー在住の日本人カウンセラー

 

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