「天国と地獄」

今月は天国(極楽)と地獄(“自業苦”)についてのお話です。「天国」と言う考え方や呼び方は仏教や神道にはありませんが、日本人が亡くなられた方々について語るときに「極楽にいる誰それ」と言う言い方はせず「天国に召された誰々」と言いますね。これはキリスト教の教えが一般にも行き渡った証拠でしょう。古代においては死後に行く世界は黄泉(よみ)と呼ばれていて、発想の原点がそもそも厳正利益重視や小我重視の視点から。あの世は「けがれ」の場、否定される場所として存在し善悪とは全く別の概念として捉えられていました。そこに仏教が伝来した後極楽と地獄の観念が混交することになります。仏教でも宗派によって前世・現世・来世の捉え方は様々。浄土宗では現世で迷いがなくなる境地に達している魂は浄土に速やかに移り、そうでない魂は生前の行いによって色々な世界にそれぞれ行くとされています。真言宗などの密教系では自分の命を精一杯活かし切ることが最高の幸せに繋がるとし、天台宗も本覚思想から来世について、今世の自分の生き方を説き転生することがあるにしても今の自分の生き方が大事だとしています。

 

それではあなたが死んだ後「霊魂」となって存在すると言われる場所とはどこでしょう? 仏教によるとこの世の行ない次第で6つの段階の世界に行く(あるいは留まる)とされています。その世界とは「地獄」(256種類の地獄がありその中でも無限地獄では休みなく苦しみを受ける世界)、「餓鬼の世界」(生前物に執着した人で満足と感謝をしなかった人が落ちる場所。飢えの苦しみを受ける)、「畜生の世界」(人間性失格の人が行く場所)、「修羅(しゅら)の世界」(自己中心的な人が行く場所、我儘で争いごとを好む人が休むことなく戦わなければならない苦しみの世界)、「人間界」(考え方や心のあり方、生き方次第でより上の世界に行くことが出来る)、「天上界」(天国ではない世界で天人にはなれるが寿命があり死ぬ時は地獄の10倍の苦しみを受ける)。 一般の人はこの6つの世界を輪廻転生しているそうですが、 厳しい修行により悟りを開いた僧侶や選ばれたごく一部の信者は→「声聞(しょうもん)界」(初心者の悟りの世界)→「縁覚(えんがく)界」(初心者第2段階)→「菩薩の世界」(永遠の真理を求めて修行する。仏の候補生)→「御仏(みほとけ)の世界」(永遠の光と死なない命。お釈迦様はここの到達された)と上がって行きます。

 

「地獄と極楽の違い」の面白い逸話のご紹介。「地獄」と書いてある門を入るとご馳走をのせたテーブルがあり、亡者たちが背丈ほどもあるなが~い箸で食べようとしています。ところが箸が長すぎて自分の口に入りません。他の亡者に食べ物を取られまいと皆ものすごい形相で相手をけん制していますがそれでも食べられずにらみ合いが繰り返され、お腹をいつも空かせています。 一方「極楽」と書いてある門を入ると地獄と同じように長い箸で食べなくてはならないようになっているのですが、人々は和やかに食事をしています。ここでは自分の箸でつまんだご馳走をお互いに向かい側の人の口に入れてあげているからです。相手のことを思いやれる人々には幸せが訪れいつもお腹一杯になれるのですね!

クリスタル

 

占い暦40年以上、

オーストラリア・シドニー在住の日本人カウンセラー

 

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