「魔術①」（２００９年３月１５日～４月１４日）

今月から２回に分けてリクエストの多い「魔術」についてお話しましょう。魔術とはMagicのこと？それとも妖術（Witchcraft）？　それとも呪術（Sorcery）？　どの部分が白でどれを黒と言うのか、どこまでが魔術でどこからが宗教なのか、ならば奇跡とは何か？　児童文学でおなじみのグリムは、「奇跡は神のもの、魔術は悪魔のもの」とすっきりと定義づけているのですが、そんなに簡単に境界線がひけるものでしょうか？　

魔術行為の始まりははるか旧石器時代の壁画「狩の成功を祈る儀式」に残っているくらい古い歴史があります。きちんとした書物に残っているものでは紀元前６世紀の古代ペルシャの魔術で、最初の魔術師としてゾロアスター（Zarathstra）の名前が残されています。　魔術はアラビア、アフリカ、アジアで別々に発祥しましたが、神、天使、精霊、妖精等の力を借りる白魔術、邪悪な悪霊、悪魔の力を借りる行為を黒魔術と呼んで区別するようになったのは古代エジプトからだと言われています。　高級魔術は神的魔術と言われ神の力を借りて行われる魔術。低級魔術とは個人的な魔術のことで、この中に薬の調合、まじない、妖術、呪術が入ります。ブラニスロウ・マリノフスキーと言う有名な人類学者は、魔術には１．生み出す、２．守る、３．破壊すると言う３つの機能があると指摘しています。

魔術は自然魔術とも呼ばれルネッサンス期に体系づけられました。天体、動植物、鉱物、精霊などの力を借り超自然的な力を得るために研究が続けられ、それが中世ヨーロッパで色々な魔術が融合して占星術、錬金術をも含んでいくようになります。「千一夜物語」でおなじみのアラビアは魔術の国で独特の魔術・「変身術」はここで生まれました。エジプト魔術は太陽神ラーと冥府の神オシリス等の神々の力を利用し、カーと呼ばれる魂、霊、霊力が魔力とドッキング、ファラオと呼ばれる絶対の力を持つ王、神官、魔術師がその奥義を伝承して行きました。でもユダヤ教の大預言者モーゼを超える魔術師はいまだ現れていません。　次回は白魔術と黒魔術の具体的な方法についてお話しましょう。是非お楽しみに！